生態調査

シカの生態調査報告書

*高山のシカ問題*

南アルプスの光岳では、ニホンジカとライチョウがツーショットで写っています。
北岳でも、旧北岳小屋周辺には、シカによる過食圧のかかった植生が広がっています。
高山のお花畑にシカの過食圧がかかっています。

どうしてそんな高いところまでシカが分布を広げることになったのでしょうか。

昭和30年代に始まった「拡大造林政策」という林野庁の政策があります。
自然林を伐採し、人工林化を進める政策でした。
薪炭から石油エネルギーへと燃料革命がおこり、薪炭林をスギやヒノキの人工林に置き換える施策でもありました。
標高の高いところには、ブナを伐ってカラマ ツが植林されました。
南アルプスのスーパー林道問題も記憶に新しいところです。 大量のブナ林が姿を消していった時代でした。
1951年の人工林面積が497万2千ヘクタール、30年後の1984年には、なんと2倍の 1,011万1千ヘクタールにも達したのです。
森林の伐採に始まる木材を生産するという経済活動は、シカの主要な餌場の造成になったという話を知っている方がこの日本列島に何人おられるでしょうか。
ヒノキの苗をシカが採食したり、剝皮して内樹皮を採食することに関して、箱根山地で調査を5年間行いました。
伐採し、ヒノキの苗木を植え付けた新植地や林業の行うために造成した林道の法面がシカの主要な餌を供給する場になっていることを栄養分析で明らかにした論文です。

これを読んでいただければ、森林を伐採するとどんなことが発生するのか理解する基礎情報になると考えます。
森林の経済活動が、今やライチョウのいる世界にまで大きな影響を及ぼすようになってしまったのです。
「シカが増加して大変だ」ではなくて、「シカを増やし続けすぎて、捕獲が追いつかなくなった」その結果、大変なのです。
適応能力の高いシカは高山まで進出し、季節的移動を繰り返しております。(古林 賢恒)


(論文)シカによるヒノキ苗への枝葉採食、内樹皮採食
2019年 箱根山地シカ調査報告書
2018年 箱根山地シカ問題中間報告書
2017年 シカの生活痕跡調査
2016年 シカの生活痕跡調査

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